永住申請中に転職しても大丈夫?

2025.05.22

 私は現在、永住申請中ですが、転職を考えています。このことで審査に影響が出る可能性はありますか?不許可になるリスクが高くなってしまうのでしょうか?

 日本での永住権取得を目指し、申請手続きを進めている外国人の方にとって、転職は大きな決断です。「永住申請中に転職しても大丈夫なのか?」「審査に不利になるのではないか?」といった疑問や不安を抱える方も少なくないでしょう。

結論:慎重な判断と入国管理局への報告が必要

 永住許可の審査では、申請者の「安定した生活基盤」が重要な要素の一つとして考慮されます。転職は、収入の変動や雇用形態の変化など、この安定性を揺るがす可能性があるため、審査に影響を与えると考えられるのです。

 また、永住申請中に転職した場合、入国管理局への報告義務があります。報告を怠ると、審査において不利に扱われる可能性もあるため、注意が必要です。

転職が永住審査に影響する可能性

    • 収入の不安定化:転職によって収入が一時的に途絶えたり、減少したりした場合、安定した生活を送るための経済力が十分にないと判断される可能性があります。特に、試用期間中や契約社員としての雇用形態への転職は、長期的な安定性に欠けると見なされることがあります。
    • 就労の継続性の疑念:短期間での頻繁な転職は、「安定した職業に就いていない」という印象を与え、日本での長期的な定着性に疑問を持たれる可能性があります。
    • 在留資格との不適合:(例:技術・人文知識・国際業務の場合)永住申請時の在留資格に基づいて行っていた業務内容と、転職後の業務内容が大きく異なる場合、現在の在留資格に適合しない活動を行っていると判断される可能性があります。
    • 高度専門職ポイントの変動:高度専門職の在留資格で永住申請を行っている場合、転職によってポイント計算表の点数が基準を下回ると、不許可となるリスクが高まります。
    • 審査期間の長期化:転職に伴い、入国管理局は新しい勤務先の情報やあなたの現在の状況について追加の確認を行う必要が生じます。そのため、通常よりも審査に時間を要する可能性が高まります。

転職を検討する際の注意点

 永住申請中に転職を検討する場合は、以下の点に十分注意し、慎重に判断してください。

    • 現在の在留資格との適合性:転職先での業務内容が、現在所持している在留資格で認められている活動範囲内であるかどうかを、必ず確認してください。
      在留資格に適合しない業務に従事していると、永住申請に悪影響を及ぼすだけでなく、不法就労と見なされるリスクもあります。
    • 転職先の安定性を確認する:転職先の雇用形態、経営状況、給与水準などを十分に確認し、長期的に安定した収入が見込めるかどうかを慎重に判断しましょう。正社員としての雇用や、安定した大企業への転職は、審査において有利に働く可能性があります。
    • キャリアアップを目指す:もし転職するのであれば、キャリアアップにつながるような、より良い条件の職に就くことを目指しましょう。収入アップや専門性の向上は、審査においてプラスに評価される可能性があります。
    • 専門家への相談:不安な場合は、入国管理局の相談窓口や、ビザ申請に詳しい行政書士などの専門家に相談することをおすすめします。
    • 可能な限り永住許可取得後の転職を検討する:最も安全なのは、永住許可が正式に下りた後に転職することです。永住権を取得すれば、就労に関する制限がなくなるため、自由に仕事を選ぶことができます。

転職した場合の対応

もし永住申請中に転職してしまった場合は、以下の対応を必ず行ってください。

    • 入国管理局への報告:速やかに、管轄の入国管理局に転職した旨を報告してください。報告を怠ると、最悪の場合、永住許可が取り消される可能性もあります。
    • 必要書類の提出:入国管理局から、新しい勤務先に関する情報や雇用契約書、収入を証明する書類などの提出を求められることがあります。指示に従い、速やかに提出しましょう。
    • 在留資格変更の手続き (必要な場合):転職後の業務内容が現在の在留資格に該当しない場合は、速やかに在留資格変更の申請を行う必要があります。

まとめ

 永住申請中の転職は、原則として入国管理局への報告義務があり、審査に影響を与える可能性があります。しかし、必ずしも不許可になるわけではありません。転職の理由やタイミング、転職先の状況などを総合的に考慮し、適切な対応を取ることが重要です。

 最も重要なのは、安定した生活基盤を維持すること、そして入国管理局に正確な情報を報告することです。慎重な判断と適切な行動によって、永住権取得への道を閉ざさないようにしましょう。


この記事を書いた人
外国人雇用労務士 LÊ THỊ NHẬT HOA

外国人雇用労務士
LÊ THỊ NHẬT HOA

ビジネス実務法務検定2級、第1種衛生管理者、派遣元責任者検定等

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